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07.教え方 分数その7 (割り算D)

映画『おもひでぽろぽろ』に学ぶ

   

B1-5ユニット(分数の割り算)の

    《情知意サイクル》における 《知》その2

         分数の割り算の仕方        




「それじゃあ、いよいよ、タエ子が知りたかった分数の割り算に入るわよ。用意はいいかな?」

タ「オーケー!!」

「レッツゴーー! 第1問!  はいくらかな? 割り算のもともとの意味から答を出してごらん。」

「エート。割り算のもともとの意味っていうのは、『割る数に何を掛けたら割られる数になるか』っていうことだったわよね。だから

     

これを考えたらいいんだ。」

「そうそう。よく覚えていたね。(割る数)×(割り算の答)=(割られる数)で考えたらいいのよ。」

タ「でも、なんだろう?  に何を掛けたら2になるんだろう?」

「とりあえず、 の逆数を入れてごらん。」

タ「 の逆数ね。 だわ。

       

2にはならないわ。お母さん。」



     



「そうね。でも、1になったんだから、もう一息じゃないの。あと、もう一つ何かを掛けたらいいんじゃない?」

タ「あ。そうか! だ!! あともう一つ、2を掛けたらいいんだ。

     

「そうそう。そのとおり! ということは、初めに返ってみる

      

これで、 の答が何か、分かったでしょ?」

タ「なぁるほど。 □の中は、 だから、8なのね。  そうか。こうして見つけたらいいんだ。」

「そういうわけで、第1問  の答は、8 でしたー。パチパチパチ 」

タ「かけ算さえ知ってたら、割り算の答は見つけられるのね。 ウン。納得。お母さん、次の問題は?」

「ハイハイ。 じゃあ、第2問  はいくらになるかな?」




 このようにして、割り算の定義(「もともとの意味」)から、答を求める問題を6〜7問やります。逆数のときと同じで、この考え方に慣れると同時に、次の段階へのステップです。

 (実は、この過程が、『【定理】割り算は、割る数を逆数に変えて掛ければよい』の証明の小学生版なのです。)

、そして、 、…など。一つ一つ、上のように考えて、答を求めていきましょう。


 間違ってはいけないのは、そこでは、『割り算は、割る数を逆数に変えて掛ける』というやり方は使わないということです。

 (まさにその理由を確かめているのだから、当然と言えば当然ですが…。)


 こうして、なぜ「割る数を逆数にして掛けたらいい」のか納得のいってないタエ子は、この作業を通して、自分で見つけていくのです。





タ「すっごーーい。 (分数)÷(分数)もちゃんと答が出るわ!」

「でしょ。でも、ちょっと時間がかかるわよね。」

タ「そうね。もっと速くできるの?」

「じゃ、今までやったのを見てみようか。一番初めにやったのをくわしく調べてみよう。 を計算して□の中が8だって見つけたわね。」

タ「ウン。」
をそのままにしておいて、これを、初めの割り算の式と比べてごらん。」


           



タ「 の答が、 ってことでしょ? それがどうかしたの?」

を、かけ算の順番を入れ替えて、 としてごらん。ほら!」

         



タ「あっ! 割る数の分母と分子がひっくり返って、かけ算になってる!」

        




「そうなの。今確かめたものだけじゃなくて、さっきやったのはどれもそうなってるでしょ。ホラ、 も、 も、ネ。」


 これを、文字を使って確かめるのが、《証明》です。小学生のこの段階では、そこまで厳密にやる必要はありません。いくつかについて調べることで、他のどんな場合にもいえるんだと、感覚的にわかればいいのです。

 こうして、峠は越えました。あとは、一気に《定理》としてまとめ(もちろん、そんな言葉は出しません)、それを使う練習(《情知意サイクル》の「意」)に入っていきます。

 それはもうこのコラムの目的ではありません。

 ただ、このコラムでは、最後にもう一度《情》に戻って、タエ子の気になるリンゴでも、同じ結果にたどり着けることを確認しておきましょう。




タ「ホントだ。」


「これは、他のどんな場合も、こうなってるのよ。だから、それを覚えておけば、今までより、ずっと速くできるようになるでしょ?」

     

タ「お母さん。 わかったワ。 『割る数の分母と分子を逆にして掛ける』ってことを知らなくても割り算はできるけれど、覚えておいたほうが速いのね。」

「そういうことなの。 こんな風に、どんな場合でもいえるよ、ってことが確かめられた性質のことを、難しい言葉で『定理』って言うのよ。それは中学生になったら出てくるから今は知らなくてもいいの。でもね、『定理』がきちんといえるってことを確かめるのは、数学では最も大切な事なのよ。タエ子はそこにこだわっていたのよ。それこそ、ほんとうに数学では大切な事なの。 タエ子はえらいわよ。」

タ「テストの点が悪かったのにほめられるって、なんか変な感じ。でもね、お母さん。私、ずっとスッキリしなかったことがスッキリしたのが一番うれしいわ。なんか、ノドのつかえてたのがすっかり取れたみたいな感じ。あー。外を走ってこようかしら。」

「よかったわね。」

タ「あと、もう一つだけいい?お母さん。」

「ええ。なあに?」

タ「(分数)÷(分数)をリンゴで考えても、ちゃんと同じ答が出せるのかな?」

「そう。出せるのよ。一つだけ一緒にやってみようか。」

タ「うん!」

は割る数を逆数に変えてかけ算にしたら、
    

でしょ。 じゃあ、リンゴで考えたら、どうなるかしら?」

タ「えーとー。 個のリンゴを、 個 ずつ分けて、お皿にのせるって考えたらいいのよね。」

「そうよ。」


    

タ「うん。 個の中に、 個は2つ入っているのね。だから、お皿は2皿。そうか、ちゃんと同じ答になるわ。」

「ね。でも、タエ子が初めに言っていた、 は難しいわ。大人でもすぐには分からないんじゃないかしら。だから、これは、タエ子が考えるお楽しみにとっておこう。みかんでも食べながら、お炬燵で考えるのもいいわね。もし、タエ子が中学校を卒業するまでに分かったら、お母さんに教えてちょうだい。」

タ「お母さん。ありがとう!! とってーーもスッキリしたわ。 公園まで走ってきま〜す!!」

「行ってらっしゃい。車に気をつけるのよ。」



            THE END




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