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031.分数指導からあらわになる深刻な問題点(2)

 

 

子供に現在現れている問題点をひとつ挙げてみれば、

 

2÷3で、3が分母に来ることが分かってない子供が多い

 

ということがある。「子供」と書いたのは、「児童」と「生徒」の両方を指すからだ。

 

 

 

これは、かなり厳しい現実である。

 

 

 

中学校で、方程式、を解くのに、ちゃんと等式の性質を使うことを意識する意味で、

 

 

 

 

 

という式を書くように指導する。そして、ここまでは、等式の性質も理解した上で書ける。

 

ところが、そのあと、 などとやったりするのだ。

 

中学校では、分数は約分さえしておけばわざわざ小数に直さなくていいよ、と言うのだが、まだそれになれてない生徒は、あえて小数に直してバツになる。

 

 

 

けれども、この間違いは重要なことを示唆してくれている。

 

という分数があったとき、5で割るのか、2で割るのか、ちゃんと分かってないのである。

 

 

 

この間違い自体は、ここで大したダメージにはつながらないのだが、しかし、こんな明らかに分かっていると教える側が思っているようなことが、実はまるでグラグラ状態、というのは、深刻な状況である。

 

 

 

指導していくいろいろな場面で、「アレッ? どうしてこんなことが分からないの?」と時間をかけてよくよく詰めていくことがある。そしてようやく、上記のようなところでしっかり分かってないことが原因だったと分かるようなことがあるからである。

 

 

 

 

 

 

 

さて、上記のような間違いをすることに対して、子供を責めることはできない。

 

 

 

学校の授業だけに任せていれば、そのような子供を作ってしまう可能性の少なからずあることは必然である。塾に行っても同じことである。

 

唯一、指導者の指導力の有無が、子供にどっちの未来を実現してあげるのか決めてしまうといっても過言でない。

 

 

 

かなりの指導力を持つ教師であっても、すべての生徒にきちんと理解させ、できるようにさせるのは、不可能に近い。それほど、あらゆる面で、教育現場の現状は厳しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今回は、完全にソフトの面から一つのことを指摘する。

 

 

 

ソフトとは、指導法のことである。

 

 

 

厳しい言い方をすれば、現在のカリキュラムでやる以上は、「算数が分からない」という子供を作ってしまうことは、避けられない。

 

 

 

 

 

上記の間違いの原因の8割は、カリキュラムに問題がある。

 

 

 

現在の指導要領では、5年生で割り算の答が分数になるという触れ方をする。そこで始めて出てくるのである。

 

そもそも、分数の分母と分子のどっちが、割り算にしたときの割る数だったのか。それが中学生になっても分かってない生徒が多いという現実は、5年生でこのことを学習したとき、はっきり理解できなかったということを如実に表している。

 

 

 

また。5年生では、割合も学習する。ところが、指導要領が新課程になって、このあたりは大変簡単になってしまった。その結果、次の見方ができない子供が増えてしまった:すなわち、

 

 

 

「比べられる数」aと「基にする数」bがあるとき、「比べられる数」aを「基にする数」bで割った商が、であり、aがbの何倍であるかを表しているということ。言い換えれば、分数の分母は「基にする数」を表し、分数の分子は「比べられる数」を表しており、その分数は分子が分母の何倍かを表しているということ。

 

 

 

改定前の指導要領の方がよかったのは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

はっきりとした結論を言えば、現在の指導要領では、多くの児童は「割合」を分からないまま卒業してしまう。さらに、その悪影響が「分数」にも及び、「分数」も分からないまま卒業してしまうであろう。

 

 

 

そうなってしまうような、単元の配列なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

では、改善策を述べよう。

 

 

 

まず、分数に限って言えば、4,5,6年と3学年(それも小学校高学年)にまたがって学習するようになっているところから改めるべきである。

 

小学校低学年でやってしまうのが望ましい。

 

しかし、どうしても、四則計算の基本はできるようになっていることが必要であるから、小学校に入学してから足し算をやるのでは、小学校2年生で分数をはじめるのは難しいかもしれない。

 

 

 

最も理想を言えば、足し算・引き算・かけ算の基本的なものは、小学校入学前にできるようになっているのがいい。現在はムリであるが、公教育でそのようなシステムを整備すれば、実現は可能である。それについては、また稿を改めて述べることにする。

 

 

 

小学校低学年で分数をやり上げてしまうというのは、理由がある。まだ、知的興味関心が曇ってないのが、小学校低学年だからである。また、小学校中学年になると、早いところではもう授業が成立しなくなったりもする。大切な概念であるからこそ、早い時期にやるのである。

 

 

 

その際、現在の分数単元の配列は改良しなければならない。帯分数は、除法も終わった後に持ってくるべきである。いらない枝葉末節的なものは、後回しにするべきなのだ。精選である。それが、児童の負担を小さくする。落ちこぼしていくリスクも減らす。

 

 

 

もう一つが、この稿の最初に述べた、はカット。やらない。分数の学習の流れからははずすのである。こうして不要なものは除くことにより、スマートになる。それは、まるで体が10kg軽くなってランニングするよう名者である。そうして、軽々と、分数の単元を歩んでいくことができるようになる。

 

最大公約数や最小公倍数も知らなくてよい。

 

 

 

除法の計算でなぜ割る数の逆数を掛けるのか、その理由もきちんと見ていく。すべて理由が必要なところはきちんと理由を見ていく。そして、正しく理解し、正しく練習して、その概念を正しく習得していくのである。

 

 

 

現行のカリキュラムでも、3年生で割り算を学習するので、そのあと一気に分数の学習をやることができる。

 

 

 

ただし、習得していくための条件としては、それに適した教材を使うことが必要である。

 

また、毎日、10分でもいいからその学習の時間を継続してとることが必要である。

 

 

 

今の学校では、できないことはないのだが、公立小学校ほどしがらみが多くて、難しいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

さて、分数をやり上げてしまったら、そのあと、「割合」をしっかり時間をとってやること。そのとき、をやればいいのである。もうすでに、分数の割り算もマスターしている児童は、これを学習して分数のもつ意味を広げることになる。より深い見方ができるようになるのだ。

 

 

 

 

 

「比」もここでやればいいのだが、実は「比」は、正の数・負の数、文字式、方程式、比例式までやって初めて「使いこなせる」ようになる。したがって、小学校では、そこまでやらないのなら、あまり「比」には深入りしないほうがいい。どうでもいいことを、ゴチャゴチャやるから、児童は消化不良を起こしてしまうのだ。これも、精選すべきである。

 

 

 

 

 

中学1年生は、2学期に「比例」に入って大変である。小学校での勉強不足の弊害の波が一挙に押し寄せるのだ。しかし、中学校では、その尻拭いをする時間もない。

 

 

 

 

 

算数で苦手意識を持ったり、いやもっと深刻なのは、分からないまま卒業してしまったりすると、中学校の数学の授業は、いっそう大きな苦痛になることが多かろう。

 

算数は大切である。

 

算数教育の大切さを、文部科学省はもっと認識するべきである。

 

 

 

算数は、分数だけではない。「図形」もある。「数量関係」もある。また、「数と式」においても、2位数・3位数の筆算や小数なども大いに時間をとってじっくりと習得させなければならない。

 

すべてを体系的に、無理なくらくらくと学習して身につけていく、そのためのもっと真剣な青写真作りを、早急にやってもらいたい。

 

 

 

そのためのホンの一つの材料を、本稿は提案した。

 

 

 

小数も含めたもう少しくわしい案は、別に出すことにする。

 

 

 

 

 

 

 

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