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028.正多面体と準正多面体づくり

 

 

 中学校1年生で学習する図形の内容が続く。

 

 

 作図にも増して、生徒が熱中するのがここである。テーマは「球に近い多面体を作ろう!」すなわち、転がしても形が変わらない、と平たく言える。

 

 

 

 

その条件をまず調べる。

 

 一つの面の形は?…正多角形でなければならない。

 

 各頂点の状況は? …頂点によって集まる面の数が違っていたらダメ。

 

模型を見ながら、条件を整理していく。

 

そこで、

 

@合同名正多角形より成り、Aどの頂点にも同じ数の面が集まり、B凸である(どの頂点も凹んでない)

 

この3つの条件を満たすように、多面体をつくっていくのである。

 

そのために前もって宿題として、正三角形、正四角形、正五角形、正六角形を、それぞれたくさん、厚紙で作って用意させておく。

 

 

 

 

 

さあ。作業開始である。

 

 生徒は、まだ見えぬ未知の物体目指して、正多角形を張り合わせていく。

 

 最初に、各頂点に正三角形を3枚ずつ集めたものが出来る。(正四面体である。名前はまだ出さない。)「おーーっ。できたね!」と持ち上げて、みんなに紹介する。

 

 

 

 正六面体を完成させる生徒も出てくる。紹介する。このあたりから、新しいものの第一製作者(発見者)になろうとして、他の生徒がすでに作り上げたものには目もくれずに新しいものに夢中で挑戦している生徒も出てくる。

 

 熱気が出てくる。

 

 そして、正八面体の登場。

 

 しばらく時間を置いて、正十二面体、正二十面体…、と姿を現してくる。

 

 

 

 自分の手を動かして、厚紙を張り合わせてひとつひとつ頂点を作っていくにつれて、次第に現れてくる、未知だった物体。完成したときには、生徒の手のひらの中で、もう既知の物体となっている。

 

 是非とも、すべての生徒に体験させたいことである。

 

 

 

 大切なのは、初めから正多面体の名前を教えて、展開図から組み立てるのではないということ。これでは、何も面白くない。そのやり方は、早いけれども、ドキドキわくわくする面白さがない。

 

 

 

 

 

 

 さて、さっきの続きに戻る。

 

 生徒が、正十二面体や正二十面体を作っているときに、次のテーマを与える。すなわち、

 

「今、3種類できたね。4種類目も出来てるみたいだぞ。おっ!5種類目もできてるのかな? じゃあ、だれか、6種類目もつくれるかな?」

 

 

 

 

 この時点では、生徒は、次々と形を現してくる正多面体を手に入れて、「6種類目もつくってやろう」と、手を動かしながらひそかに燃えている。

 

 しかし。作業の早い生徒が、5種類作って、6種類目に挑戦するがなかなか出来ない。

 

 

 

 

 「先生。ホントに6種類できるん?」

 

という声が上がる。

 

 

 

 ここで、教師の技(演技)の見せ所である。

 

「そうよ。オレが中学校のとき6種類作って、先生にほめられたんやで」

 

 

 

「へーーっ。よっしゃーー!」

 

すると、あっちで「わかった! ウン、できる!」

 

といって6種類目をつくり始める生徒が出てくる。

 

すでにウスウス、6種類はできないと感じ始めていた生徒も揺さぶられる。

 

 

 

こういうあたりが、面白い。教室の空気は何度も揺れる。

 

 

 

1時間でここまでくるのはムリである。最低2時間ぶっ続けで取りたい。

 

 

 

さて、3時間目あたりが解決編ということになる。すなわち、なぜ6種類目は出来ないのか?という理由の解明である。

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒とのエネルギーの流れの方に戻る。

 

 

 

このドラマはさらに続くのである。新しいテーマの設定:

 

「じゃあ、先生が中学校のとき作ってほめられたっていうのは何だったんだろ?」

 

すると、タネを知った生徒は、ニヤニヤしながら「先生の作り話だ」とすっと交わそうとする。

 

 

 

そこで、「じゃあ、見せてあげよう。家を探して、見つけたんだ。その6種類目を!」

 

 

 

「えーーーっ!?」

 

 

 

生徒は固唾を飲んで、私が袋から「ソレ」を取り出すのを見守る…。

 

 

 

 

 

こうして書きながら思い出していても、楽しい。このあとは、正多面体のときと同じように、条件を整理して、未知なる物体の再発見のたびに出るのである。

 

 

 

こうして、更なる息吹を吹き込まれて、より深い奥地へと生徒との探検は続いていく。

 

 

 

話を端折るが、そこで、生徒たちは見事な準正多面体を作り発見していく。

 

 

 

そこで、さらなる新テーマ:「準正多面体は全部で何種類あるのか?」を与える。

 

すごいものである。ほとんどのものが生徒たちの手によって発見されるのである。

 

 

 

 

 

        ※           ※           ※

 

 

 

 

 

さて、現状を整理する。上に長々と書いたが、生徒たちのエネルギーの強さがひとつ。よく分かっていただけたと思う。

 

 

 

ところが、である。

 

 

 

 新課程になってから、はじめてこの授業は出来なくなった。

 

 この、「正多面体・準正多面体づくり」をやった最後の年は、2001年である。それまで20年以上、ずっとやってきたこの授業…。

 

 

 

 なぜだろう??

 

 私がずっとこだわってきたこの授業。

 

 なぜ、続けることをあきらめたのか?

 

 そして、それで(やめてしまって)よいのか? それとも、復活させるべきなのか?

 

 

 

 考察しなければならないが、そのためには、まだ時間が必要である。何らかの結論が出たら、発表することにしたい。

 

 

 

 


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